フィリピン人と働いているとかなりの頻度で耳にする、フィリピン人の "maybe you can"
- Maybe you can check with him.
- Maybe you can prepare the presentation first.
どれも日常的に職場で聞く表現です。
ぼくはフィリピンで働き始めた頃、この "Maybe you can" を聞くたび、
あぁ、了解、そういう選択肢もあるのね!
くらいに受け取っていました。
しかし、フィリピンでしばらく働いていると気づきます。
あれ、これ全然 "maybe" じゃなくない…?
今回は、フィリピンでのビジネスシーンや日常会話の中でよく聞く "maybe you can" の本当の意味と、アメリカ・イギリス標準英語とのニュアンスの違いを解説します。
アメリカ・イギリス英語の "Maybe you can" は基本的にただの「提案」
まず、アメリカ英語・イギリス英語の "Maybe you can" は、基本的にはかなり柔らかい表現です。
Maybe you can ask John.(ジョンに聞いてみるのも一つの手かもね。)
くらいなもんです。
もちろん状況や文脈にもよりますが、言葉そのものとしては、相手に強く何かを求める表現ではありません。
フィリピン英語の "Maybe you can" の意味はほぼ「依頼」か「指示」
一方、フィリピン人が「Maybe you can ask John.」と言った場合、そのニュアンスは異なります。
フィリピン英語における "Maybe you can" は、単なる「選択肢の提案」ではなく、オブラートで5重ぐらいで包んだゴリゴリのタスク依頼です。
もっと解像度を上げると、フィリピン人が「Maybe you can ask John.」と言っているのであれば、だいたい
- ジョンと話をして早く仕事を進めてください。
- それはジョンが詳しいから(あるいはジョンが担当しているから)彼に聞いてください。
くらいの意味を含みます。何なら、
- さっさとジョンのとこ行けや
- まさかジョンに相談せずにこのまま進めるなんてこと、ねぇだろうなァ…?
みたいな圧が込められていることも珍しくありません。
それくらい、フィリピン人の言う "Maybe you can" には、明確に「依頼」または「指示」の意図があります。
日本人の感覚で、
Maybe = たぶん、you can = あなたはできる
Maybe you can = できるかもしれないですね
みたいな捉え方をしてしまうと痛い目を見るので要注意です。
なぜ遠回し?フィリピン人が「Maybe you can」を使うときの文化と心理
英語で話をしていると、つい 英語 = ダイレクトに物事を伝える言語 として認識してしまい、相手の言葉をそのまんまの意味で受け取ってしまう、なんてことはありませんか?
実際、アメリカ英語だと「思っていることはそのままちゃんと言葉にする」みたいな考え方が根っこにあったりします。
ただ、フィリピン人のマインドは意外とそうでもありません。
フィリピン人は直接的な言い方を避けがち
フィリピンでは、明らかに立場が上の人、例えば上司が部下に向かって話すときは、けっこうズバッとダイレクトな物言いをすることが多いですが、立場が近い人同士であったり、あるいは自分より立場が上の人に向かって話すときは、直接的な表現を避けて遠回りな言い方をするのが基本です。
日本人にとっての「和を重んじる」ほどのレベルではないかな、とは感じますが、少なくとも「その場はなるべく穏便に済ませたい」という雰囲気は、日頃の会話の中でも確かに感じます。
ただし 遠回しな表現 = 相手への優しさ、とは限らない (実体験)
ただここで注意しておきたいのは、フィリピン人がその遠回りな表現が、相手にプレッシャーを与えたくないという純粋な "優しさ" からくるものかというと、必ずしもそうではないというところです。
もっと噛み砕いて言うと、あくまでフィリピン人が、直接的な表現を使うと自分自身が気まずいから(直接的な表現を使ってしまうと自分の精神的負荷が大きいから)遠回しな表現を使っているだけ、というパターンが大いにあるということです。
例えばぼくがある会議に向けてプレゼンの準備を進めていたとき、フィリピン人の同僚から、
Maybe you can print the slides and hand them out to the attendees.
(ぼくの解釈: スライドを印刷して出席者に配るのもアリかも)
と言われたとき、ぼくは
That's a good idea.
(まぁでもどうせスクリーンに映すしわざわざそんなことしなくていいだろ)
くらいに受け止め、提案された "スライドを印刷して出席者に配る" 案をガン無視しました。結果、あとになってから、
なんで印刷しなかったの!?あの会議ではそういうルールなんだよ!
とバチクソに激詰めされました。そんな怒るなら先にそう言ってくれや…
フィリピンでの生活や仕事からくる過度のストレスにより、ぼくの脳内では、防衛本能により相対するすべてのフィリピン人が猫耳美少女に自動変換されています
それから時が経って、ぼくも 直接的な言い回しを避けるというフィリピン人の性質を少しずつ理解し始めたわけですが、「だったらあの超ダイレクトな激詰めは何なの…?」という謎が残りました。
そこで後日(ほとぼりが冷めてから)ぼくのガラスのハートを粉々にしてくれたフィリピン人の同僚本人へインタビューしてみたところ、本人の頭の中では以下のような思考原理が働いていたことがわかりました。
- 最初に「Maybe you can...」と言ったのは、「Please...」や「You should...」などと言うと、あからさまに指示してる感が出すぎて気まずいと思ったから。
- ぼくを責め立てたときは、「事前にちゃんと忠告してたのにやらなかったお前が悪い」というロジックが完全にキマッていたので、とくに気まずいなんてこともなく、遠慮なくダイレクトアタックをぶち込むことができた。
…いや "maybe" だろ?理不尽すぎでは…?
ちなみに確認のため他のフィリピン人にも聞いてみましたが、どうやらこれはフィリピン人にとってあるあるな考え方なんだそうです。
難しいぜフィリピン人!
結論: フィリピン人から「Maybe you can」と言われたら秒で動け
フィリピン人が「Maybe you can...」と言っているときは、選択肢を提示しているのではなく、ほぼそれを「やれ」と言っている と解釈し、なるべくその通りに行動したほうが安全です。少なくとも「それやらなかったらまずい?」くらいの確認は行うようにしましょう。
特にフィリピンで働く日本人は、ある程度 上のポジションとして勤務していたり、あるいは単に外国人ということでちょっと距離感があったりして、フィリピン人の「Maybe you can...」を食らう機会が比較的多いと思われます。
気を抜いていると「あの日本人は全然言うことを聞いてくれない」みたいなレッテルを貼られかねないので、要注意です。